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「医師不足」はなぜ起こったか? 第1回 PDF 印刷
2009年 1月 05日(月曜日) 17:25

妊婦たらい回し事件(その1)

    1年間に、なんと2万4000回も発生している!

 
 2008年10月、脳内出血を起こした東京都内の妊婦が、緊急時の受け入れ先になっている7つの病院をたらい回しにされて出産後に死亡するという、痛ましい事件が起った。いわゆる「妊婦たらい回し事件」だが、これは、東京都にかぎったことではなく、近年、全国で頻発している。
 いったいなぜ、こんなことが起るのか? 
 その背景にある「医師不足」問題をシリーズで考えていきたい。
              ■
「妻が死をもって浮き彫りにした問題を、医者、病院、都、国が力を合わせて改善してもらいたい」
「誰も責める気はなく、裁判を起こすつもりもない。赤ちゃんを安心して産める社会にしてほしい」
 これは、「妊婦たらい回し事件」死亡した女性の夫の言葉だ。いまの日本の医療現場の荒廃を、これほど考えさせる言葉はない。
 この妊婦は、じつに7つの病院をたらい回しにされたあげく、最終的にいったんは受け入れを拒否した都立墨東病院に運ばれた。しかし、すでに手遅れだった。
 都立墨東病院といえば、「総合周産期母子医療センター」を掲げる大病院で、地域の中核的な医療施設である。しかし、最近は医師集めが難しくなっていて、救急患者に対して十分な対応ができなくなっていた。
 大都会の、それも東京のど真ん中で、医者が足りないなどといことがあるのだろうか?

 事態を重く見た舛添要一厚生労働大臣は、事件後すぐに都立墨東病院を視察した。そして、記者団に、次のように言った。
「医療や介護は地域に密着したものなので、地域で力を合わせて問題解決を行わないといけない。だが、やはり構造的な問題は医師不足だ」
 現在、日本は約28万人の医者がいる。しかし、それだけでは人口比からいって足りないというのが、近年の定説になっている。ただし、ただ足りないというのではなく、とくに、産婦人科医など特定の診療科にそれが顕著だということに、この問題の深刻さがある。また、2004年からスタートした臨床研修制度も、この問題の背景にある。
 実際、舛添厚労大臣は、さらにこう付け加えた。
「全国の総合周産期母子医療センターの実態把握や、医師不足の原因とされている臨床研修制度の見直しを急ぎたい」
 しかし、いくら急いでも、いったん減ってしまった医者の数がすぐに回復するわけではない。なぜなら、医学部は6年間あり、卒業してもそれで一人前の医者になるわけではないからだ。
 文部科学省は、今年から、医学部の定員を増やすことにあしたが、そうして増えた医者が現場につくのは、あと何年も先の話である。
 
 この都立墨東病院の事件から1カ月もたたないうちに、2007年11月に、札幌市の自宅で30歳代の女性が早産した未熟児(約1300グラム)が7病院で受け入れられず、その後死亡したという事件が報じられた。
 2007年に、救急搬送で医療機関から3回以上受け入れを拒否された「たらい回し」は、全国では、2万4089件(重症、妊婦、小児)も報告されている。
 その理由をあげると、
 1、処置困難
 2、手術・患者対応中
 3、医療訴訟のリスク
 4、搬送・受け入れの総合調整を含め消防と医療機関の情報連携不足
 などだ。
 総務省消防庁によると、2007年に1回の受け入れ先照会で患者の搬送先が決まったのは80%。しかし、残りは、受け入れ先がなかなか決まらず、最大では、62回も受け入れを拒否された例があるというから驚く。

 
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