誰もが悩む渡し方と相場
誰もが悩む渡し方と相場 - 「謝礼お断り」の貼り紙は逆の意味 |
ページ 3 の 9 「当病院は医療費以外の現金、ことに医師への謝礼は一切、受け取りません」 などといった貼り紙を、あなたは、病院の受付やフロアーの掲示板などで見かけないだろうか? では、そんなとき、あなたはどう思うだろうか? 「よかった。ここはそういう病院なんだ。これで、安心」と思うとしたら、あなたは人間として本当に素直である。多くの人が、こうした貼り紙を見て思うことは、じつは、「やはり謝礼がいるのか」である。 確かに貼り紙がしてある病院というのは、よく聞いてみると、じつは医師のほとんどが受け取っている。なぜなら、過去にその例があるから、貼り紙をしているからだ。 そんな病院のベテラン医師が、いみじくもこう言う。 「まだ20代で大学病院の外来にいたころ、年配のある男性患者さんが『忙しいから診察の順番を早くしてほしい』と私のポケットに2万円を突っ込んできたことがありました。そのときはカーッとなって突っ返しましたが、いまなら黙ってもらっておいて、診察の順番については知らん顔をしているでしょうね。実際、そうなってしまいましたよ。その方が患者さんだって気分を悪くしないしね」 医者というのは、若いうちは誰でも潔癖感が強く、プライドも高い。患者の気持ちをくみ取る余裕もまだない。しかし、年を重ねるうちに、潔癖感だけでは世間は渡れないと、医者も知るようになる。 つまり、「謝礼禁止」の貼り紙は、ほとんど意味をなさない。しかも、こうした貼り紙をしている病院ほど、謝礼が横行しているという現実もある。 もし、あなたが世間知にたけた大人なら、「もしかしてこの貼り紙は、逆に『謝礼』をしてほしいという意味ではないのか」と、疑ってかかるのではないだろうか? たとえば、差額ベッドがいっぱいのときに、順番を早くする便宜のために謝礼が使われることもある。したがって、「当院では謝礼は一切お断りします」と貼り紙がしてあっても、そんなものは信用できないだから、例の貼り紙は、うがった見方をすれば、払えない人を安心させるための方便と言っても過言ではない。 |