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長生きは本当に幸せか?(4) 「看取り難民」にならず「自宅死」をするためにすべきこと

 今後、「看取り難民」が急増するということが心配されています。「看取り難民」というのは、文字通り「看取り」をしてくれる場所、はっきり言って「死に場所」が確保できない人々のことです

 2025年には団塊世代のすべてが75歳以上になり、後期高齢者は、日本の人口のほぼ6分の1の2000万人に達します。じつは私も、その一人です。団塊世代はその後、次々に死んでいき、日本はいままでに経験したことのない「多死時代」を迎えます。厚労省によると、年間死亡者数が最多と予想される2040年には、2015年に比べて死亡者数がなんと約36万人も増加します。

 

 そのため、厚労省では 「病院から地域へ」、あるいは「施設から在宅へ」というスローガンを掲げ、「病院死」を減らし「在宅死」を増やそうとしています。そのため、病院のベッド数を減らしています。そうしないと、医療財政がパンクしてしまうからです。

 しかし、現状では、どう見ても多くの人が願う在宅死はかないません。かなわないばかりか、死に場所さえ確保できなくなる可能性があるのです。もしあなたが団塊世代で、自分はなんとなく死んでいけると漠然と考えていたら、大変なことになります。

 

 現在、多くの人が在宅死を望んでいます。がんなどで入院して終末期を迎えたら、家に帰って死にたいと思っています。

 私の時代は、具合が悪くなったら、近所の医者に診てもらい、その医者がちょくちょく往診に来てくれて、自然に「かかりつけ医」になり、看取りまでしてくれました。言い方はおかしいかもしれませんが、のどかな時代でした。しかし、いまは違います。すぐに大病院に行くか、近所の医者に紹介状を書いてもらって大病院に行きます。そのため、かかりつけ医がいる人はほとんどいません。いたとしても、その医者が看取りまで面倒を看てくれることはほぼありません。

 

 

 そのため、具合が悪化したとき、家族は慌てて救急車を呼ぶ場合があります。しかし、搬送先の病院が満杯で受け入れを断る場合があります。また、受け入れられたとしても、そのまま延命治療が行われます。つまり、どう死にたいか、あらかじめ決め、家族とも十分に話し合っておかなければ、自宅死はかなわないばかりか、死に場所さえ失ってしまうのです。

 在宅で死亡し、医者が呼べなかった場合は、死亡診断書がないと「不審死」扱いとなります。警察の取り調べが入る場合があります。この場合、遺体は解剖されるかもしれません。つまり、在宅死を望むなら、看取りをしてくれる在宅医が絶対に必要なのです。

 

 

 ただし、在宅医を確保しても、自宅で看取りをするには、まだ二つのハードルがあります。

 一つ目は、同居する家族がいること。いうまでもなく、看取りの場には家族がいる必要があります。二つ目は、24時間対応の訪問看護師のサービスを受けていることです。在宅医はいつでも来られるわけではありません。そこで、まず訪問看護師を呼び、応急に対処してもらいます。そうして、いよいよという時に医師を呼ぶわけです。ただし、在宅医も訪問看護師も、いまは絶対数がまったく足りていません。

 厚労省では、この問題を解決するため、20184月、介護保険制度に「介護医療院」という施設を創設しました。既存の介護病床などのからの転換と新設で、死に場所を提供しようというのです。介護医療院では重看護者を受け入れ、場合によっては看取りまで行います。

 しかし、介護医療院の開設は遅々として進んでいません。 

 2019年5月 

 
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